ボデガス・フアン・ピニェロ Bodegas Juan Piñero

シェリーは数あるスペインワインのなかでも特に高い国際的知名度を持ち、シャンパーニュ地方の僅か3分の1程度のブドウ栽培面積にもかかわらず、その名は日本でも広く知られています。当地に受け継がれてきた伝統的なブドウ栽培、醸造、熟成方法に基づいて造られており、特に製法の違いによるシェリーのタイプとソレラ・システムは、シェリーの個性を際立たせる要因となっています。

ボデガス・ファン・ピニェロは、スペイン・アンダルシア州カディス県のサンルーカル・デ・バラメダで高品質シェリーを生産しているボデガです。リリースの為のサカ（ワインの引き抜き）を制限し品質を維持した長期熟成シェリーは、ワイン・アドヴォケイトやギア・ペニンなどの権威あるワイン専門誌で非常に高い評価を受けています。

醸造所の発展は、1992年にサンルーカル・デ・パラメダ（サンルーカルで生産されたシェリーのみマンサニージャと呼ばれます）のトラスボルサ通りに位置し、以前はボデガス・アルグエソ所有の1920年代に建設された3,000m²のワイナリーを購入したことから始まります。翌1993年にはワインの浸っていた1,800個の500Lアメリカン・オーク空樽を購入。その後同サイズの400個のソレラ樽と最上級のブドウ畑から得られた最高品質シェリーマストを購入。通常創設時は他のボデガからすでに熟成したシェリーを購入するケースが殆どですが、建設業と不動産業で財を築いたファン・ピニェロは、ゼロに近い形で自らのブランドをスタートさせました。

建物自体の大規模な改造にも取り掛かり、地中海特有の大西洋側から吹く湿った冷たい西風（ポニエンテ）と暖かくて乾いた東風（レバンテ）を取り込む大きな窓、オランジェリー、中央のアンダルシアのパティオ（中庭）、高さのあるアーチ型の天井、保湿性の高いアルベロのフローリングが採用され、典型的なサンル―カルの建造物の特徴を備えた、醸造において理想的な施設を生み出しました。

2000年にはシェリーの品質向上に多大なる貢献をしてきたペドロ･ドメック社から、近くのアルコバ通りにあるボデガをマルハ・マンサニージャのソレラ樽と共に購入。これらの設備は全てトラスボルサ通りの醸造所に移され、マンサニージャの優れた熟成環境がもたらされました。

2007年にはシェリーのセレクションを拡大し続けたいという思いから、ヘレス・デ・ラ・フロンテラのサン・フランシスコ・ハビエル通りにある100年の歴史があるボデガを買収（2017年に売却し、現在はサンルーカルに設備、ワインを集約）。そこは800m²の広い地下室と一定温度を維持するために必要なフローリングと厚い壁を備えており、同時に手に入れた750個のオロロソの古いアメリカン・オーク樽と以前はフェルナンド・ア・デ・テリーが所有していたフィノ・カンボリオのソレラ樽の熟成に最適な環境が整っていました。

アルマセニスタとして発展してきたボデガス・フアン・ピニェロは2013年、現在のエノロゴ（醸造家）、ラミロ・イバニェスと契約したことを機にオリジナルシェリーの販売も開始。さらなる発展を続ける今最も注目を集めるシェリー・ボデガです。